うまんちゅユニオンでは、年次有給休暇の取得申請を正当な理由もなく拒否し、2万2824円を賃金からカットしたことは違法として、本裁判を提起することにしました。

年休は労働基準法に定められていることなので、労働基準監督署への申請や労働審判などのより手軽な方法もあるのですが、お金の支払いを受ければ解決ということで終わらさず、その違法性を真正面から問うたたかいとして、本裁判に訴えることにしたものです。

「会長が拒否」と年休を認めないのは納得できない

ある企業(提訴した段階では公表予定)の組合員が、昨年12月に年休を申請しました。
半日年休が4日、1日年休が2日を申請したのですが、会社は「会長がダメだから」と申請要旨を突っ返してきました。

 そんなもの年休を認めない理由にならない。
と、今度は総務課長に突っ返された申請用紙を提出して再度申請しました。
会社からは何のお達しもなく、年休申請用紙も突っ返されることもなかったので、組合員は、「こんどは認めてくれたんだな」と年休を行使しました。

ところが、半日年休を2日行使した時点で、総務課長から呼ばれて「勝手に休んでいる。会長がダメという事だから拒否する。」と言ってきました。
会長が拒否するという一言で年休権を侵害されてたまるか!!
ということで、組合員は時季指定した日に年休を行使してきました。

そうすると、半日年休1日と、1日年休2日を残した時点で、会社は申請用紙を返却してきました。その要旨には「1月以降にお願いします。」と書かれた付箋が貼り付けられていました。時季変更権のつもりなのでしょう。
そんな紙切れ一枚ではなっとくできない!!
と、組合員はそのまま年休を取得しました。

そのような経過があって、会社は「有給を承認していないから無断欠勤だ」として2万2824円をカットしてきたのです。

ユニオンは、3回の団体交渉のなかで「賃金カットは違法だからカットした分を支払え」と要求したのですが、会長名で出されてきた最終的な回答書は「回答が変わる事はありません。」との態度でしたので、自主交渉での解決を断念して提訴することにしました。

年休訴訟の争点

第1に、正当な時季変更権を行使することなく、「拒否する」ことが認められるのか?
第2に、付箋に「1月以降にお願いします」とするメモが、正当な時季変更権の行使と認められるのか?
という点にあります。

これらの争点に関連して、会社が年休権を保障するために代替要員を確保する努力を行ったのかどうか(団交では一切その努力を行っていないと明言している。)
組合員が年休を行使することによって、「事業の正常な運営」にどのような支障が生じるとことが想定されたのか。(実際には何らの支障も生じていないが、会社は「12月は忙しいのに、誰かが組合員の代わりに組合員の業務をやれば、本来の仕事ができない」としか団交では言えない。)等々も、事実認定の問題として明らかにされなければならないでしょう。

年休は労働者が申請した日に与えなければならず、使用者が時季変更権を行使できるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。
しかし、事業の正常な運営を妨げる場合ではなく、「業務の都合により」などとする就業規則が多く見られます。そのため「忙しいからダメ」などと片付けられている場合が少なくありません。
忙しいことが年休を認めない理由とされれば、要員をギリギリに押さえ、その少ない人員で毎日残業を前提にしている会社では、それこそ年休をとることは不可能になってしまいます。