広島に本社を置くエスティーエスに対する未払い賃金の支払を求めるKさんのたたかいは、労働審判で決着しました。
エスティーエスがKさんを被告として不当利得返還の少額訴訟を広島の裁判所に
その過程で、今度はエスティーエスが、Kさんを被告として、広島簡易裁判所に不当利得返還請求の少額訴訟を起こしてきました。
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残業代などの賃金請求での労働審判事件が那覇地裁で係争中の2021年7月21日、エスティーエスは、広島簡易裁判所に、下記の内容で少額訴訟を起こしてきました。
訴状によると、被告(Kさん)は、原告(エスティーエス)に、給料の差額11万2000円、交通費の差額22万3960円、合計33万5960円を支払え、と訴えたのです。
給料の差額とは、Kさんは、労働時間を虚偽申請していたので「(エスティーエスは)実際には被告が勤務していない労働時間について給与の支払をしていた」と主張して、勤務していない時間分の給与11万2000円を返還せよというものです。
交通費の差額とは、モノレール(ゆいレール)で通勤していたKさんに対して、エスティーエスは「その都度切符を購入したかのように精算し、請求し受領している。」ことにより、エスティーエスは「通常の定期代を超える交通費が支出されている。」として、定期代との差額22万3960円を返還せよというものです。
日本語の用法からすると、「その都度切符を購入したかのように清算し」とは、「その都度切符を購入したかのように装って清算し」となりますから、Kさんは、その都度切符を買うことをせず、安くなる方法(訴状の文脈からすると、エスティーエスは定期券の購入ということを想定しているのだろう)で切符を買っていながら、さもその都度切符を購入したかのように装って、差額を不当に受領したと理解できます。
那覇簡易裁判所への移送決定と訴訟の取り下げ
訴えられたからには、受けて立たなければなりませんが、かと言って広島まで出かけるお金はありません。
というのも、エスティーエスは、7月31日付で「処分通知書」をKさんに送付し、懲戒処分を行っていたのです。
通知書には、「今後の雇用が見込まれないため登録抹消といたします。」と記載されており、実質的な即時解雇の通告を行っています。
懲戒処分の理由として、4点挙げられていますが、「不正に給料の上乗せを行い会社に損害を与えた」、「定期券を購入せず実費を請求しその差額を長期にわたり会社に損害を与えた。」ことも、懲戒理由に挙げられています。
このような事情のもとで、Kさんは無収入の事態に陥り、とても広島に行く金銭的な余裕などなかったのです。
ここで少し説明すると、会社の言う登録抹消とは「Kさんは登録型派遣労働者だから、その登録を抹消する」との意味で、Kさんは自分を派遣労働者であるとするエスティーエスの言い分には納得していません。
そこで、代理人弁護士と相談し、広島簡易裁判所に対して「移送申立書」を送付し、「本件を那覇簡易最願書に移送する」よう求めました。
広島簡易裁判所は、Kさんの移送申立に対して、原告であるエスティーエスの意見を聴取(エスティーエスは移送に反対の意見書を提出)した上で、那覇簡易裁判所への移送を決定しました。
移送が決定してまもなく、エスティーエスは訴訟を取り下げてきました。
Kさんとしては、この少額訴訟に勝ってもエスティーエスが請求しているお金を払わないく済むというだけで、何のメリットもない訴訟ですから取り下げに同意しましたが、「一体この訴訟は何だったの?。私に対する報復・嫌がらせとしか思えない」と、憤っていました。その憤りは今も継続しています。