警備会社の労働者で組織するユニオンのある支部では、「出勤用車両を全従業員に確保せよ」との要求書を提出しました。

要求どおりのことを実現しようとすると、従業員は100人を超えますから、中古車でそろえるとしても莫大なお金がかかります。

こうした要求は一見非常識に見えます。
一体なぜ、そんな要求を会社に出したのでしょうか。

この会社では、中間管理職が自分の好き嫌いを基準にして、労働者の労働条件を決めるという傾向があります。

従業員の勤務割もその一例で、月に25日働く労働者がいる一方で、10日しか勤務を組まれない労働者がいたりしていました。

労働組合で公平な取り扱いを要求し、一定の改善をさせているのですが、個人的な好き嫌いを基準とする不公平な取り扱いは、完全に改まった訳ではありません。

このような中で、最近採用した労働者にたいして「大変だろうから、会社の車を使ってよい」として、会社から現場までの距離を会社の車両で通勤することを許可することが起きました。

この車両は、お客さんから何か異常があれば、現場に駆け付けるために使われる車両で、その車がなければ、現場に駆け付けるためには自分の車を使用するか、たまたまバス通勤で来た時には現場に駆け付けることもできない事態となります。

支部の仲間は、
社用車での出勤を止めさせよ
という意見が大半でした。

しかし、公平な取り扱いを求めることでは同じでも、低い水準で公平さを実現するのか、高い水準で公平な取り扱いを実現するのか、議論することにしました。

その結果、新採用の仲間の労働条件を引き下げる要求をするようりも、従業員全員の水準を新採用の仲間と同等のところに引き上げよ、ということが、労働条件の改善につながる、という結論に達しました。

もちろん、要求を実現することは生易しいことではありませんが、ユニオンと支部は、会社と交渉・議論をとおして、恣意的な労働条件の決定がなされない職場をつくっていくことをめざしています。