沖縄県副知事が行った埋め立て承認撤回について、国土鉤虫症が撤回を取り消した件で、沖縄県は二つの裁判を起こしている。

その一つが10月23日に判決を迎える「関与取消訴訟」と言われる裁判だ。

争点は幾つかあるが、最大の争点は「国が私人と同じ」として、行政不服審査法を使うことができるのか?

というところにある。

行政不服審査法第1条(目的等)「この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続きの下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」

不服申立てをすることができるのは、「国民」である。

第7条2項(固有の資格)「国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、この法律の規定は、適用しない。」

辺野古の埋め立ては、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号)第二条1(a)は、「個個の施設及び区域に関する協定は、第二十五条に定める合同委員会を通じて両政府が締結しなければならない。」と規定しており、かかる規定に基づき我が国はアメリカ合衆国との合意に基づき同国に施設及び区域を提供しているところである。」(仲里利信議員の質問主意書に対する回答)ものですから、辺野古の埋め立てが国の事業であることは、疑う余地のない事実である。

埋め立て申請も国の機関として行い、埋め立てを行う業者等との契約も、すべて国の機関として行っている。

ところが、埋め立て承認の取消や撤回がなされると、突然国の機関が私人になってしまうのだ。

国土交通相の採決書は、「本件撤回は、行審法第2条の『処分』、すなわり、『直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定する』ものに当たるものであるから、審査請求人(沖縄防衛局長)は一般私人と同様な立場で処分を受けたと言えるのであって、『一般私人が立ち得ないような立場にある状態』と解されている『固有の資格』においてその相手方となったものではないと認められる」と、唐突に国の機関を“私人”に認定する。

行政不服審査法第2条(処分についての審査請求)は、「行政庁の処分に不服のある者は、第4条及び第5条第2項の定めるところにより、審査請求をすることができる。」とされている。

「行政庁の処分に不服のある者」とは、第1条を受けて「国民」に限られなければならないのは、当然である。それだからこそ、国交相は、何が何でも国の機関を「私人」に仕立て上げなければならないのである。

2018年10月26日、110氏による行政法研究者有志一同は、「辺野古埋立承認問題における日本政府による再度の行政不服審査制度の乱用を憂う。」との声明を発表し、「日本政府がとる、このような手法は、国民のための権利救済制度である行政不服審査制度を乱用するものであり、法治国家にもとるものといわざるを得ない。」と指弾している。

安倍首相は、「法の支配を重視」、「法の支配の貫徹」を口にするが、法の支配を崩しているのは、他ならぬ安倍首相自信で自身である。