12月1日から、改正労働安全衛生法が施行され、従業員50人以上の企業にはその実施が義務化されました。
これを受けて、労働者はストレスチェックを受け、会社に報告することが義務であるかのように、有無を言わさず結果の報告を求める企業が見受けられます。
こんなやり方では、制度の趣旨が正しく生かされず、禁止されている不利益取扱が横行しないかとの危惧をもってしまいます。
事業主も労働者も制度の趣旨を理解し、心理的な負荷を軽減するために双方が努力することが必要だと言えます。
ストレスチェックの実施は、労働安全衛生法に新たに第66条の10が挿入され、12月1日に施行されたことによるものです。大まかな内容は
1 事業者は、労働者に対し、医師、保健師(医師等)などによる心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
2 事業者は、検査を受けた労働者に対し、医師等から検査の結果が通知されるようにしなければならない。検査を行った医師等は、検査を受けた労働者の同意を得ないで、事業者に検査の結果を報告してはならない。
3 事業者は、労働者が医師による面接指導を受けることを申し出た場合は、医師による面接指導を受けさせなければならない。そして、事業者は労働者が医師による面接指導を申し出たことを理由として、不利益な取扱をしてはならない。
等々です。
また、この条文に基づいて「心理的負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」が定められました。
指針には、
10 労働者に対する不利益な取扱の防止
(2)禁止されるべき不利益な取扱い
ア)労働者が受検しないこと等を理由とした不利益な取扱い
①ストレスチェックを受けない労働者に対して、これを理由とした不利益な取扱いを行うこと、例えば、就業規則においてストレスチェックの受検を義務付け、受検しない労働者に対して懲戒処分を行うことは、労働者に受検を義務付けていない法の趣旨に照らして行ってはならないこと。
②ストレスチェック結果を事業主に提供することに同意しない労働者に対して、これを理由とした不利益な取扱いを行うこと。
以下、略
このように、事業者にはストレスチェックの実施を義務付けていますが、労働者には受検すること、受検の結果を報告することも、義務とはされていません。
このように書いてはきましたが、その趣旨は義務ではないから受けないようにと拒否することを推奨するためではありません。
この制度がうまれるきっかけは、過重労働などにより労働者がうつ病を発症し、自殺などを追い込まれてしまう現状から、自殺対策として検討されてきたもので、「仕事による強いストレスが原因で精神障害を発病し、労災認定される労働者が、平成18年度以降も増加傾向にあり、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することが益々重要な課題になっている(指針)」ことによるものです。
指針では、
4 ストレスチェック制度の手順
ア 事業者による基本方針の表明
イ ストレスチェック及び面接指導
①衛生委員会等において、ストレスチェック制度の実施方法等について調査審議を行い、その結果を踏まえ、事業者がその事業場におけるストレスチェック制度の実施方法等を規定として定める。
以下略
5 衛生委員会等における調査審議
(1)衛生委員会等における調査審議の意義
(2)衛生委員会等において調査審議すべき事項
以下、11項目について、項目だけ記載
①ストレスチェック制度の目的に係る周知方法
②ストレスチェック制度の実施体制
③ストレスチェック制度の実施方法
④ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析の方法
⑤ストレスチェックの受検の有無の情報の取扱い
⑥ストレスチェック結果の記録の保存方法
⑦ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析の結果の利用目的及び利用方法
⑧ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の開示、訂正、追加及び削除の方法
⑨ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の取扱いに関する苦情の処理方法
⑩労働者がストレスチェックを受けないことを選択できること
⑪労働者に対する不利益な取扱いの防止
このような点を全部すっ飛ばして、「ストレスチェックを受けろ」、「受けたら結果を報告しろ」では、一体こんなことで労働者のプライバシーは守られるのか、不利益な取扱いを受けることはないのか、などという労働者の不安は増大するでしょう。
労働者も会社の言いなりにならず、衛生委員会をきちんと開催させ、会社のいいなりにならない信頼できる仲間を委員として参加させ、労働者の声を反映した内容とさせていくことが必要です。
そのためにも、職場に労働組合が存在する意義は大きいと言えますので、ストレスチェックのやり方に不安を感じている方は、これを機会に、労働組合をつくること検討することをお勧めします。
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