新型コロナウイルスの感染が広がり、それにつれて労働者を休業させる企業が増加する状況のもとで、雇用調整助成金制度が労働者のなかにも知れ渡るようになってきた。

それはそれで良いのだが、どうも内容を誤って理解している方が少なくない。

それはそうだろう。会社がきちんと説明しないことも要因になっている。

助成金の有無が休業手当支給の前提?

昨日の相談でも、「休業中は6割支給を認めるという内容の書類にサインせよ。サインしなければ助成金の申請ができないから(休業手当)はゼロになる。」と会社が行ってきたがどういう事?というのがあった。

こんな風に言われると、助成金が得られれば休業手当は払われる、助成金が得られなければ休業手当はでない、と理解したとしても不思議ではない。

この方だけではなく、助成金の有無が休業手当の前提条件であるかのように理解している方が案外覆いのだ。

休業手当が先なんです。助成金は休業手当の穴埋めなんです

そこで、「助成金をもらうかもらわないかは会社の自由。もらわなくても会社は労働者に対して休業手当は払わなければなりません。まずは会社が休業手当を払うのが先なんです。その上で、会社が雇用調整助成金を申請してもらったとしても、それは先に出した休業手当の穴埋めになるだけです。」と説明する。

国は給料の9割を出すんでしょ?

「国が給料の9割を出すんでしょ?」という質問を受けるが、これも誤って理解している点だ。

上でも書いたように、助成金は穴埋めなのだから、「会社が一人も解雇者を出さずに雇用を維持した場合、皆さんに払った休業手当の9割を出すんです。皆さんの給料の9割を出すんじゃないんですよ」と説明する。

そう言うと、「えー、今は給料の半分以下しかもらっていないから、会社が助成金を申請すればもっともらえると思っていたのに、全然増えないの?」と落胆しているのが電話でもはっきり分かる。

そこで、「いやいや、がっかりするのも分かるけど、貴方しだい、職場の仲間の皆さんしだいでは、もっと増やす方法があるんですよ。」と励ましてやる。

平均賃金の6割で納得せず、給料の全額を払えとがんばること

労働基準法で使用者(会社)に支払い義務が課されているのは「平均賃金の100分の60以上」だから、「6割払う」と言われても、実際にはそれまでもらっていた給料の半分以下となる労働者が少なくない。

だから、給料全額を休業手当として払え!と要求することを勧める。

通常の賃金が一日あたり10,000円、月22日就労、平均賃金を算定するための3か月の暦日が92日と仮定すると、平均賃金は(220000×3)÷92=7174円。その6割は7174×0.6=4304円にしか過ぎない。

この4304円から公租公課(税金と社会保険料)が差っ引かれるのだから、労働者がとても生活できる水準の金額ではない。

この際だから言うが、労働基準法を変えてもう少し引き上げるようにしなければ、現在のように休業が長引けば労働者は生きていけない。せめて平均賃金ではなく通常の賃金にすべきである。

雇用調整助成金の一日あたりの上限金額は、8330円である。

会社のことも少しは考え、10000円を少しまけて9255円の休業手当を出してもらう。

9255円のうち9割の8330円だから雇用調整助成金で穴埋めでき、会社が負担するのは925円だけとなる。

沖縄県は国の雇用調整助成金に上乗せして補助を行うことを表明している。

仮に沖縄県が1割補助を実施すれば(現段階では補助率は未定)、925円は沖縄県からの上乗せ補助で穴埋めできる。

このように、労働者が頑張ることによって、会社の負担がなくても4951円(9255円ー4304円)休業手当を増やすことができる計算だ。

休業手当は倍増できる。そのためには労働組合にまとまろう!

机上の計算では休業手当を倍増できる。

これは決して机上の空論ではない。

労働者のがんばりしだいでは実現することは可能だ。そのためには、労働者がバラバラに悩んでいるのではなく、労働組合にまとまってがんばることが必要になってくる。

そうは言っても会社も休業しているのだから、払うお金がないじゃないか、思うかもしれない。

お金がなかったとしても、当座借り入れて凌ぐことができる。

中小企業の資金繰り支援である「無利子・無担保」の緊急融資制度が、沖縄金融開発公庫(又は日本政策金融公庫)利用できる。

また、都道府県の制度融資を利用すれば、これも実質的に無利子で借りられる。

労働者も使用者も、知恵と力を出し合うことによって、より良い方向をめざすことは可能できる。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

休業手当の問題でお困りの方は、全労連のフリーダイヤル 0120-378-060 までお気軽のご連絡ください。沖縄県内からの発信には沖縄県労連が対応します。沖縄県以外から発信される方には、発信地の全労連加盟組合が対応いたします。