3月16日、厚生労働省は「妊娠・出産、産前産後休業及び育児休業等の取得等を理由とする解雇その他不利益取扱い事案への厳正な対応策について」と題する通達を大臣官房地方課長、雇用均等・児童家庭局長名で都道府県労働局長あてに発出しました。

発表された資料によると、育児休業に関する不利益取扱いは平成16年度
(2004年度)521件だった労働者からの相談は、20年度(2月までの11か月分)1107件に増加しています。

また、同じ期間で妊娠・出産等を理由とした解雇等不利益取扱いは875件から1806件とこれまた増加しています。

ところが驚くことには、育休関連の是正指導が平成20年度(2008年度)で47件、是正件数は38件という少なさです。

妊娠・出産等関係も是正指導24件、是正22件という少なさです。
紛争解決援助の申込み235件、機会均等調停会議の調停申請11件を加えても、相談件数の半分にも届きません。

是正指導などに表れない多くの女性労働者は、どのような状況に置かれているのでしょうか?
とても、気になる数字です。

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法)第10条は、「事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」と定めています。

この規定は、介護休業、看護休暇にも準用されますので、これらの休業、休暇についても不利益取扱いは禁止されています。

法律に禁止されている育児・介護休業に対する不利益取扱いが、なぜこれほどまでのはびこるのでしょうか?

派遣切りなどと根っこは同じです。
労働者を人間として見ることなく、企業から見て使い勝手が悪くなったら切り捨てる、「人間材料」としての扱いが根底にあるからです。

そのうえ、企業の無法を助長しているのが監督官庁による指導の弱さではないでしょうか?

強力な指導ができない要因として、次の二点が考えられます。

育児介護休業法には法律に違反した企業に対する罰則規定がないこと。

公務員は減らせば良いとばかりに、労働基準行政に携わる公務員をどんどん減らし、人手不足になっていること。

安心して妊娠・出産、育児にかかわれないような社会には、未来はありません。
少子化もさらに進行するでしょうし、それでは社会の活力も失われます。

妊娠、出産、育児休業、介護休業などに関して、解雇や不利益取扱いを受けている労働者がいましたら、全労連や各地の県労連に相談し、権利を守るためにがんばりましょう。