本記事で、エスティーエスに触れて記載してきましたが、エスティーエスから就業規則、三六協定、紛争事案に関する一定のデータ提供が本日(4月27日)ありました。

当然、就業規則や協定に関する作成・変更に係る過半数代表者の選出方法、周知の方法など、検討することは残りますが、提供していただいたことを受け止め、併せて、団体交渉に関する方向性についても一定の合意がなされたことから、エスティーエスに関する文言については削除することとしました。

うまんちゅユニオンとしては、決して悪意をもってブログ記事にしているものではありません。過去においても、紛争事案が和解で解決した場合は、和解解決をした旨を記載して、記事内容は削除してきました。裁判での判決により紛争が終結した場合で、なおかつ、組合が悪質と判断したケースはそのまま残してあります。

それ故、本記事においては、変形労働制に関する部分について多少の修正を行った内容とします。

なお、4月17日の投稿で、「エスティーエスに就業規則はない」と断定した点について、エスティーエスの担当者から「就業規則はあるのになぜそんな事を書くのか」とお叱りの電話をいただきました。その点に関しては、当方の手落ちでありましたので、率直にお詫びいたします。

<1か月単位の変形労働時間制>

最近、「変形労働時間制を採用している」ことを理由として、残業代がわずかしか払われないとの相談が複数寄せられています。

労働基準法第32条は労働時間について、1週間について40時間を超えて、1日について8時間を超えて働かせてはならないと定めています(労働時間の特例が適用される事業所においては1週44時間)。これは労働時間に関する原則です。

しかし、第32条の2(1箇月単位の変形労働時間制)、第32条の4(1年単位の変形労働時間制)で、一定の条件をつけて、平均して週40時間であれば、特定の週に40時間を超えて、特定の日に8時間を超えて労働させることを認めています。

一箇月単位の変形労働制を定めた労働基準法第32の2は下記のとおりです。

「使用者は当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、1か月以内の一定の期間を平均し、1週間当たりの労働時間が前条第1項の労働時間(週40時間のこと)を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間(1日8時間)を超えて、労働させることができる。」

しかし、就業規則で「1か月単位の変形労働時間制による。」と記載してあっても、それのみをもって変形労働時間制が有効かどうかという論点が残ります。

公益社団法人全国労働基準関係団体連合会が発行している「労働関係法のポイント」では、1箇月単位の変形労働時間制について、次のように記しています。

1か月単位の変形労働時間制においては、1か月以内の一定期間(変形時間)を平均して1週間当たりの労働時間が週の法定労働時間を超えない範囲で、労使協定、就業規則等に各日、各週の所定労働時間を具体的に定めなければなりません。

また、変形期間における所定労働時間は、下記に記す所定労働時間の枠内とするよう示しています。

31日の月=177.1時間
30日の月=171.4時間
29日の月=165.7時間
30日の月=160.0時間

従って、1か月単位の変形労働時間制では、上記の時間を超えた労働時間が、時間外労働となり、割増賃金の対象となります。

<1年単位の変形労働時間制>

1年単位の変形労働時間制を定めた労働基準法第32条の4は、下記のとおりです。

「使用者は当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、第32条の規定にかかわらずその協定で、第二号の対象期間として定められた期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において、当該協定で定めるところにより、特定された週において同条第1項の労働時間(週40時間)又は特定された日において同条第2項の労働時間(8時間)を超えて労働させることができる。(以下略)

1か月単位の変形労働時間制は、就業規則で決めることが可能であったのに対して、1年単位の変形労働時間制については、就業規則(労働者が関与できるのは、法律上は意見を述べることができ、仮に反対意見であっても就業規則を作成・変更することは可能)ではなく、過半数労働組合または過半数代表者との書面による協定がないと実施できません(過半数労働組合又は過半数代表者がサインしなければ実施できない)。

ここでも、特定された週、特定された日について、労働時間を決めなければならないことになっています。

1年単位の変形労働時間制は、長期間に効力を及ぼす制度であることから、さらに細かい要件が定められていますが、その点は省略します。

結局、1か月単位であれ、1年単位であれ、各日、各週の労働時間を特定することなく、仕事があればあるなりに8時間以上働かせ、無ければないなりに8時間以下で働かせ、結果、177.1時間以内の労働時間だから残業はなし、177.1時間を超える労土時間があるからその分が残業時間(1か月単位の31日の月の例)ということにはなりません。

変形労働時間制を口実に、残業代がまともに払われていないと思われる方は、全労連のフリーダイヤル0120-378-060まで、お気軽にご連絡ください。