ある宿泊関連業者は、スタッフと呼ばれる非正規雇用労働者が休業中で誰一人として職場にいない6月1日付で就業規則を改定しました。

スタッフの皆さんは、どのように就業規則が変えられようとしているのかも知らされず、過半数代表者を選んだこともないのに、正職員がサインして労働基準監督署に届け出たとのことです。この点に関する違法性については、本稿では触れません。

変更内容に関する問題は、年次有給休暇を取得した際に支払う賃金を、通常の賃金から平均賃金に変更した点にあります。これにより、労働者は不利益を被ることになります。

その点を追及すると、会社は「平均賃金より高くなる場合があるので、不利益変更ではない」と、お口アングリの珍主張をしてきました。

その主張の根拠を問うと、「残業した場合には高くなる」というものです。

確かに、そういう場合があるにはあるのですが、長時間残業を強いられるのですから、やはり不利益変更と言わざるをえません。

そんなわけで、年休時の賃金比較を行ってみました。

時給1000円の労働者が一日8時間、月に20日働くと仮定して計算してみました。

労働基準法では、平均賃金は前3か月の賃金合計を総日数で割って算出しますので、前3か月の総日数を90日と仮定(実際は91日または92日、2月を含む場合は少なくなる)すると、平均賃金は1000円×8時間×20日×3か月÷90日=5333円となります。

それでは、平均賃金で計算しても年休取得時の賃金として8000円を得るためには、どれだけ働かなければならないを計算してみました。計算式は下記のようになります。

(8000円+1000円×1.25×x)×20日×3か月÷90日=8000円
xが残業時間です。

この計算式の解(答え)は、x=3.2時間となり、月64時間の残業をこなさなければ、平均賃金で計算しても通常の賃金である8000円を得ることができません。

この数値は月の労働日を何日と設定するか、実際の総日数によって多少の変動が生じますが、長時間残業が必要であることに変わりはありません。

月の残業時間が45時間を超えると心身に悪影響を与えるとする科学的根拠をもって、月の残業時間を45時間と法律で規制しているにもかかわらず、それを大幅に上回る残業時間を前提にして「通常の賃金より、平均賃金が高い場合がある」とする主張は、到底理解できるものではありません。

同じような問題に直面している方は、全労連のフリーダイヤル 0120-378-060 までお気軽にご連絡ください。