仮処分決定で強制執行(差し押さえ)ができる

仮処分決定(審尋調書=和解調書)の効力は、結局は判決と同じ効力を有します。
強制力を持っているのです。
ここで重要なのは賃金仮払の決定がでることです。

仮処分決定が出たのを契機に、会社が争うことを止めて仮処分決定の内容を踏まえて紛争を解決するのであれば良いのですが、起訴命令の申立を行って引き続き本裁判で争う姿勢に執着した場合は、裁判が継続する期間の生活費が問題となります。
注)起訴命令の申立とは、債務者側が裁判所に対して「債務者としては、本裁判で争う意思がありますので、裁判所として債権者に対して、早く本裁判を起こすよう命令してください」との趣旨で行う申立のことです。

そのリスクを回避するために、仮処分での賃金仮払を求めるのですから、効力には強制力がなければなりません。
賃金仮払が認められたにも関わらず、会社が仮払をしなかった場合は強制執行(差し押さえ)を申し立てて差し押さえをすることが可能です。
ほとんどのケースでは仮払に応じるのですが、私の経験では仮払に応じなかったため強制執行に踏み切ったケースが1件ありました。

債権者が債務者との間で労働契約上の地位を有する
との決定が出たとしても、決定としての意味は重いのですが、会社が争い続ける場合には現実的な意味はそれほど大きくありません。
労働契約上の地位にあることと、就労させることとはイコールではないからです。
その点は、確定判決であっても変わりはありません。
会社はお金さえ払っていれば良く、必ず就労させなければならないとの義務を負わないというのは、現在の司法の考え方となっています。つまり、就労権を認めるところまで踏み込んだ判決を出していないのです。
したがって、判決を力に会社に就労を迫るたたかいが重要になってきます。
労働組合がその役割を発揮する場面です。

ちょっと話が先走ってしまいましたが、「仮処分とは言え、一応の裁判所の判断が出たのだから、これを機に解決しましょう。」と会社に働きかけることが重要です。

必ず職場に戻る決意であれば地位保全の仮処分を選択するのが安心

地位保全の仮処分決定で賃金仮払が認められれば、差し押さえが可能!!
この点が、労働審判と大きく異なる点です。
労働審判はどんな内容の審判がだされようと、2週間以内に審判を不服とする側が異議申立を行えば、審判事態が取り消され、従ってなかったものとして本裁判に移行します。

必ず職場に戻る!!
との決意をもって解雇争議をたたかうのであれば、地位保全の仮処分が労働審判より使いでがあると言えそうです。