会社を辞めたいのに、会社が辞めさせてくれない !!

こんな相談が結構舞い込んできます。

人手不足が進行しているもとで、労働力を確保するために、労働者を辞めさせない企業が案外あるものです。

ブラックとは言わないまでも、労働条件が低く、募集をかけてもあまり応募が見込めない企業では、特にその傾向が強いように思います。

退職代行業があるなんてビックリ

辞めたいのに辞めさせてくれない!

そんな事情があるものですから、世の中には退職代行業なるものがあるようです。

他人がやることにあれこれ論評することはしませんが、ビックリポンでした。

沖縄県労連に下記の相談が寄せられました。

「辞めさせてほしいと社長に申し出たが、社長から『後任が見つかるまで働いてくれ』と言われて働いてきたが、後任は採用されず1年半が経ってしまった。」というものです。

こうなると、退職代行業に駆け込みたい気持ちになることも理解できます。

沖縄県労連は、退職代行業ではありませんが、助けを求めて相談してきたのです。

このような相談に対しては、一人でも加入できる組合に加入し、組合費を納めてもらえば(憲法28条の団結権の行使)、労働組合は組合員の要求を実現するために経営者と団体交渉をすることができます(団体交渉権の行使)。

経営者に話し合いを申し入れて解決を図ることになります。

経営者は、労働組合からの団交(話し合い)の申入れに対して、労働組合法第7条によって拒否することはできません。

辞めるには2周間前に辞めますと伝えるだけで良い

先に挙げた相談事例は、「ひどい話だな」とは思うものの、では違法かと言えば違法ではないのです。

「辞めさせてほしい」と「辞めます」では、法律上の効果がまるで違うのです。

民法627条は次のように定めています。

民法627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

「解約の申入れ」とは何でしょう?

「辞めさせてほしい」と言うのも解約の申入れではないの?

普通に考えれば、解約の申入れと思えますが、そうでもないのです。

立場を逆転させて考えてみましょう。

経営者が労働者に「あなたを解雇したいので、解雇させてほしい」(実際に多いのは「辞めてくれないか」との言い方が多い)と言えば解雇になるのでしょうか?

答えは“否”です。

「辞めさせてほしい」、「辞めてくれないか」などと言うのは、相手にお願いしているだけですから、必ずしもそのお願いに応じる必要はないのです。

「解約の申入れ」とは、「辞めます」、「解雇する」というように、明確でないといけません。

辞めたい時は、キッパリ辞めますと言いましょう

多くの労働者は、「辞めます」という強い調子で経営者に告げることをしません。

むしろ「辞めさせて欲しい」という言い方が多いのではないでしょうか?

それに対して、傾斜が「辞めたいのは分かった。辞めて良い」と対応してくれれば、退職になりますが、「辞められては困る。働きなさい」と応じても違法とはなりません。

ときには、「辞めたい」というだけで、民法にいう「解約の申込み」をしたと思っている方もいますが、それは自分の気持を伝えてだけですから、経営者が「あ、そう」と聞き流したって文句は言えません。

辞めたい時には、キッパリ「辞めます」と言いましょう。

そうすれば、2週間後には経営者がどう言おうが雇用契約は終了です。

「辞めさせてほしい」は合意解約の申込み

それでは「辞めさせて欲しい」というのは、一体何なのでしょう。

それは合意解約の申込みです。

その意味は「辞めたいので、辞めることを認めて下さい」ということになります。

それを認めるか認めないかは経営者の意思次第です。

逆に、経営者から「辞めてくれないか」と、合意解約の申込みを受けた時に、労働者がそれを了解して辞めるか、辞めるのは嫌だと拒否するかも労働者の自由です。

このように合意解約とは、相手の合意を取り付けたうえで解約することを言います。

実際、「辞めてくれないか」と言われて解雇されたと思い込み、会社に出勤しなかったところ、しばらくして無断欠勤を理由に解雇されたという事例だってありますから気をつけましょう。

解雇の場合は2周間前でなく30日以上前に予告が必要

民法の規定によれば、経営者も労働者も、解約の申込みを行うことによって2週間後には雇用契約を終了させることができます。

しかし、労働者が2週間後にクビといわれることは、直ちに生活が窮迫に陥れられることになりますので、労働基準法で「30日以上前に予告する」ことと修正されています。

それでも社長に「辞めます」というのは怖い

キッパリ「辞めます」と言えば、2週間後には会社が何と言おうが出勤する必要はない!

それは分かったけれど、自分で言うのは怖い。

社長にあれこれ言われて「辞めないでくれ」と頼まれれば断る自信がない。

「辞めると言ったあと、14日間意地悪されるのではないか」

と心配する方もいらっしゃるでしょう。

辞めたい人がキッパリ「辞める」と宣言し、何があっても14日間を耐え抜くことができるなら、労働組合も退職代行業も必要ありません。

「一人ではとても『辞める』と言い出せない」方には、誰かの助けが必要になります。

その“誰か”として、全労連と全労連加盟組合を思い起こしてください。

全労連とその加盟組合への相談は、無料・秘密厳守

全労連(全国労働組合総連合)と全労連に加盟する労働組合は、全国各地で働く仲間の労働相談に対応しています。

労働相談は秘密厳守です。

相談を受けたからと言って、相談された方の同意を得ることなく会社に通報したりすることはありません。

労働相談は無料です。

労働相談は無料ですから、相談に来られた方に相談料を請求することはありません。

労働組合として会社と交渉することを希望する時に、労働組合加入と組合費の納入が必要なだけです。

全労連とその加盟組合への労働相談は、フリーダイヤル 0120-378-080 で受け付けています。

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