平成31年3月22日付で、総務省の「情報公開・個人情報保護審査会(以下、「審査会」という。)」から答申書が届いた。

2017年の最低賃金審議会での資料や議事録、最低賃金審議会委員の任命に係る文書の一部不開示に関して、行政不服審査法に基づいて審査請求した件に関する答申書である。

経緯としては、沖縄県労連が情報公開法にもとづいて、「本件対象文書」の開示を求めたところ、沖縄労働局は一部(分量的には一部ではあるが、内容的には最も重要な部分が含まれる。)不開示とした。そのため、沖縄県労連は、厚生労働大臣に対して不服審査請求を行ったところ、厚生労働省は審査会での審査を諮問したものである。

本答申書は、厚生労働省からの諮問に対する審査会から厚生労働大臣への答申書である。

以下、審査会の結論その他の重要部分を抜粋して紹介する。

審査会の結論

「『平成29年度沖縄地方最低賃金審議会委員等の成功にかかる書類』、『平成29年度沖縄地方最低賃金審議会資料』及び『平成29年度沖縄地方最低賃金審議会議事録』(以下、順に「本件対象文書1」ないし「本件対象文書3」といい、併せて「本件対象文書」という。)につき、本件対象文書1及び本件対象文書2の一部を不開示とし、本件対象文書3を保有していないとして不開示とした決定については、理由の提示に不備がある違法なものであり、取り消すべきである。」

原処分庁(沖縄労働局)の不開示理由については

「確かに、原処分においては、不開示の理由として法5条1号、4号及び6号は示されているものの、本件対象文書のどの部分が、どのような根拠により、これら不開示自由のいずれに該当するのかが開示請求者において了知し得るものになっているとはいえないから、理由の提示の要件を欠くと言わざるを得ず、法9条1項及び2項の趣旨並びに行政手続法8条に照らして違法であるので、原処分は取り消すべきものである。」

諮問庁(厚生労働省)が不開示とすべきとしていることの妥当性については

「本件対象文書につき、本件対象文書1及び本件対象文書2の一部を法第5条1号、4号及び6号に該当するとして不開示とし、本件対象文書3を保有していないとして不開示とした決定について、諮問庁が、本件対象文書1及び本件対象文書2の不開示とされた部分は同条1号、2号イ及びロ、4号並びに6号柱書に該当するとしてなお不開示とすべきとしていることについては、その理由の提示に不備がある違法なものである、取り消すべきであると判断した。」

審査会は、「理由の提示の要件を欠く」、「理由の提示の不備」を指摘している。これについては、下記のとおり述べている。

「開示請求に係る行政文書の一部又は全部を開示しないときには、法9条1項及び2項に基づき、当該決定をした旨の通知をしなければならず、この通知を行う際には、行政手続法8条に基づく理由の提示を書面で行うことが必要である。理由の提示の制度は、処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨から設けられているものである。」

指摘している。

 

 

 

このように、審査会は、審査請求人である沖縄県労連の主張を認容し、沖縄労働局の一部不開示を違法と認めたものである。

最低賃金の決定にあたって、沖縄地方最低賃金審議会に設置される専門部会(ここで最賃の具体的な答申額が審議・決定される)は非公開とされ、議事録も重要部分は不開示となっており、どのように最低賃金が審議され、決定されたのかという肝心な点については、数人の関係者以外は知らされない。

沖縄県労連は、長年に渡って沖縄労働局に対して、最低賃金議会本審議会と専門部会の全面公開を求めてきたが、拒否され続けてきた。

その重要な専門部会の議事録さえ、肝心なところは不開示・黒塗り公開である。(審査請求の時点では)

沖縄県労連は、厚生労働省と沖縄労働局が審査会の答申を真摯に受け止め、文書の全面公開を行うとともに、審議会と専門部会部会の全面公開を行うことを強く求める。