うまんちゅユニオンの組合員が「年休を認めず、賃金をカットしたのは違法」として、争っていた年休権訴訟の控訴審で、福岡高裁那覇支部は、組合員の主張を認めて、会社の控訴を棄却する判決を言い渡しました。

カットされた賃金は2万円余の金額ですが、一人組合員だけの問題ではなく、労働者の年休権を否定する重大問題として位置づけて争ってきました。

福岡高裁那覇支部の判決を、以下に紹介します。

なお、ユニオンは会社にダメージを与えることが目的ではなく、「忙しいからダメ」と年休を認めてもらえないような働く仲間の力になることを願ってアップしますので、会社や個人が特定されるような箇所は匿名としてあります。

平成28年3月8日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成27年(ネ)第130号  未払賃金請求控訴事件(原審・那覇地方裁判所平成26年(ワ)第748号)

口頭弁論終結日 平成28年1月14日

決    判

 

   沖縄県<以下、略>

     控訴人(被告)      Y

     同代表者代表取締役    略

     同             略

     同訴訟代理人弁護士     略

   沖縄県<以下、略>

     被控訴人(原告)          X

     同訴訟代理人弁護士    略

     同            略

 

主     文

 

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は控訴人の負担とする。

 

事 実 及 び 理 由

 

第1 控訴の趣旨

 1 原判決を取り消す。

 2 被控訴人の請求を棄却する。

第2 事案の概要(略称は原判決の.ものを用いる。)

 1 本件は,控訴人の従業員である被控訴人が,年次有給休暇の時季指定にかかる請求をして就労しなかったところ,控訴人が時季変更権を行使したとして賃金を支払わなかったため,控訴人に対し,未払賃金合計2万2824円及びこれに対する支払日以後の日である平成26年2月1日から支払済みまで商事法定利率による遅延損害金の支払を求める事案である。

原審は,被控訴人の請求を認容したので,控訴人が控訴した。

 2 前提となる事実,争点及び当事者の主張は,次のとおり,当審における控訴人の主張を付加するほか,原判決の「事実及び理由」第2の1及び2のとおりであるから,これを引用する。

(当審における控訴人の主張)

   ア 原料のストックは,1日の連続した流れ作業の中で確保されている必要があり,2ないし3日分をストックしておくことはできないから,ストックを多めにして,正常な業務の運営に支障がないようにすることはできない。

   イ 控訴人は12月の繁忙期に対応するためにアルバイトや派遣社員を利用するなどして代替要因(ママ)確保の努力をしており,本件申請後に時間的余裕があるとしても,さらに人員を補充することは困難であった。

第3 当裁判所の判断

 1 当裁判所も,被控訴人の請求には理由があるものと判断する。その理由は,次のとおり訂正及び付加するほか,原判決の「事実及び理由」第3の1ないし4のとおりであるから,これを引用する。

  (1) 原判決の訂正

   ア 原判決15頁2行目の「そして,」の次に「N工場長は,被控訴人に対して,年次有給休暇申請書を返却する頃に,忙しいこの時期には避けるよう伝えた旨の供述をしており,また,」と加え,同6行目の「考えるのが自然」を「認めるのが相当」と改める。

   イ 原判決17頁9行目の末尾に「ただし,真空パックを剥ぐ作業自体は女性でも可能であり,パートにこれを指示しなかったのは,アウトパック作業の効率を考えてのことである(乙21の写真③,原審証人A)」を加え,同21行目の「A主任」を「A主任ら」に改める。

   ウ 原判決18頁16行目の「そうすると」から同18行目の「ものの,」までを「しかるに,A主任らが過重に至らない程度に被控訴人の業務を負担することや,」に改める。

   エ 原判決19頁18行目の「A主任」を「A主任ら」に改める。

  (2) 当審における控訴人の主張について

  N工場長は,冷蔵庫のスペースに限りがあることや生肉の温度管理は難しく,3から4日間冷蔵庫に保管しておくことはできない旨供述する(乙20)。

 しかし,同供述によっても,被控訴人が時季指定した各時季において,例えば,前々日の夕方や前日の朝に原料を多めに冷蔵庫へ移すなどして,原料の冷蔵庫内でのストックを可能な限り多くし,鮮度上の問題を生じさせないで作業を行う余地がないとはいえず,その年休取得が事業の正常な運営の妨げとなるほどのものであったことが明らかとなったといえるものではない。

 また,確かに,被控訴人は代替要員の募集を行ったものの,新規に人員を補充することはできなかったことが認められる(原審証人N5頁)。しかし,仮に,ストックを多くしたり,A主任らが被控訴人の業務を分担することで業務上の支障を回避することが,およそ困難であるというのだとすると,被控訴人が12月中に有給休暇を取得することは常にできないこととなりかねない。そうであれば,そもそも予め代替要員を確保しておく必要があったものであり,年休権保障の観点からして時季変更事由の存在を認めるべきではない。

 よって,いずれにしても,控訴人の時季変更権行使が違法であるといえるものであることは,訂正後の原判決第3の3に説示するとおりであり,控訴人の主張は前提を誤っている。

 2 よって,原判決は正当であって,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。

福岡高等裁判所那覇支部民事部

裁判官裁判長 略

   裁判官 略

   裁判官 略