12月7日、福岡高裁那覇支部は、「ウチクルス」解雇を無効する判決を出した。(「ウチクルス」解雇という呼び方は、管理人が勝手に使用しているもので、マスコミ等では「パワハラ訴訟」となっています)
当然と言えば、当然であるが、この訴訟のなかで、基地従業員の地位に関する重要な問題が明らかにされた。
米軍と防衛省が締結している諸機関労務協約(IHA)で、「軍紀の維持のかく乱を含む安全上の理由による解雇事案」の場合は、労働者が裁判で勝っても、復職を米軍が拒否することができる」趣旨の内容が盛り込まれているというのです。
この点に関して、福岡高裁那覇支部は「在日米軍が従業員の復職を拒む事案には該当しないことは明らか」と断じています。
沖縄防衛局は「裁判所の理解を得られなかった」とコメントしていますが、このコメント自体が、自国の国民の人権を擁護する立場を放棄し、米軍の理不尽な解雇を正当化しようとする立場を表明しています。
この福岡高裁判決に接して、「25年前にこのような判決を出してくれる裁判官であったなら」と思い返すたたかいがあります。
米軍基地内で営業する理容店で働いていた5人の労働者が、米軍捜査機関のおとり捜査の結果、「売上金着服している」との疑いをかけられ、パス(基地内への通行証)を取り上げらる事件が発生した。
雇用主である理容店経営者は「バスを取り上げられ、基地内の職場に入れない労働者を雇用することはできない」との理由で解雇してきました。
5人は「泥棒の汚名を着せられたままでは引き下がれない」と、司法の場で争い、そのうちの2人は最高裁まで戦い続けました。
しかし、裁判の結果は敗訴でした。
一審の那覇地裁は「労働者が売上金を着服したという証拠はないが、安保条約とそれにもとづく地位協定によって、基地の司令官には広範な裁量権が認められており、日本の司法権は及ばない」という、何とも情けない判決を出したのです。
この一審の那覇地裁判決は福岡高裁那覇支部、最高裁でも維持され、結局5人の労働者は職場に戻ることも、何の補償を受けることもありませんでした。
しかし、最後までたたかった労働者にとって「泥棒の汚名を晴らすことはできた」ことが誇りとなりました。
もしも、あの時、「無実の労働者のパスを取り上げることは認められない」との判決が出ていたら、5人の人生もまた変わったものになっていたでしょうし、今回の事件も起きなかったかも知れない、と思うのです。