過半数代表者の役割は大 しかし・・・

職場において労働者の利益を擁護する上で、過半数代表者は重要な役割を担っています。

職場に労働者の過半数を組織する労働組合がない場合、就業規則に意見を述べたり、三六協定(時間外・休日労働に関する協定)などの諸協定に、労働者を代表してサインするあるいはサインしないという役割を担っています。

労働基準法は、就業規則について次のように定めています。

(作成の手続)
第90条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数を組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。

そして、第89条で、労働基準監督に就業規則を届け出ることを義務づけています。

ところが、この過半数代表者を選び方については、残念ながら法を逸脱した場合が多いと言わざるを得ません。

A県に本社を置くB社は、正社員100人、非正規社員1000人を雇用し、A県の県庁所在地にあるC営業所をはじめ、全国に営業所を有しています。

B社は、就業規則を変更(改訂)し、C営業所を管轄する労働基準監督署に届け出ています。「過半数代表者」とされるDの意見は「異議なし、同意します。」です。

過半数代表者Dは、C営業所に勤めている人とされていますが、誰が選んだかと言えば100人の正社員だけで選んでいます。圧倒的多数の非正規労働者は、過半数代表者を選ぶ過程で蚊帳の外に置かれています。当然、就業規則がどのように変えられるのかも、全く分からないままです。

B社は、その就業規則は「全国一括」だから、全国の営業所にも適用されると考えています。もちろん沖縄営業所も例外ではありません。

先に引用した労働基準法第90条から
1 就業規則は事業場(B社の例では各営業所)毎に作成すること
2 過半数代表者も事業場毎に選出する
3 労働者の過半数とは、正社員だけを指すのではなく、パートタイム労働者や派遣労働者などの非正規労働者を含む全労働者である
ことは明らかです。

そうすると、過半数代表者とされるDは、過半数代表者と言えるのでしょうか?
私の答えはNOです。C営業所の過半数代表とも言えません。

1 C営業所に所属する労働者の半分以上を占める非正規労働者が排除されている。
2 C営業所以外の営業所に勤務する正社員は、Dを選ぶ権利を有していない。
からです。

Dさんって、ホントに過半数代表者?

また、仮に、C営業所の過半数代表者が適法に選出された場合であっても、「全国一括」で意見を述べる権限を有しているものではありません。

B社に労働組合があり、全国すべての事業場で労働者の過半数を組織している場合、労働組合が「全国一括」で意見を述べることは可能ですが、全国47都道府県のうち、例えば沖縄営業所だけが労働組合がなかったり、労働組合があっても労働者の過半数を組織していなければ、沖縄営業所では過半数代表者を選ばなければなりません。

就業規則に関して言えば、過半数代表者は意見を述べることができるだけで、例えその意見が「改訂案に反対」であっても、使用者を拘束することはできず、使用者はその意見書を添えて労基署に届け出れば良いことになっています。

ところが、協定の締結ともなると、過半数代表者の役割は格段に大きくなります。

労基法第36条を見てみましょう。

(時間外及び休日の労働)
第36条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数を組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表するものとの書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、(中略)その協定で定めるところにより労働時間を延長し、または休日に労働させることができる。

残業や休日に出勤させるために、書面による協定がなければなりません。

そして、過半数代表者はサインを拒否することも可能なのです。

つまりは、過半数代表者が、会社の示した内容に対して「この内容ではサインできない」と拒否すると、会社は労働者に残業や休日労働を命じることはできず、残業や休日労働をさせると違法となるのです。これは大きな権限です。

過半数代表者が過半数代表者としての役割を果たしているのかという点については、稿を改めることとします。

労働者が知らないうちに過半数代表者が決められ、就業規則や協定が不利益に変えられた、それはおかしいのではないか?と思われる方は、全労連のフリーダイヤル 0120-378ー060 までお気軽にご連絡ください。